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Interview room

監修者、修了生に聞くDHC「英日出版総合コース」座談会

出席者のプロフィール


「ADVANCEDコース」で繰り返し訓練を続けて自分の翻訳を見つけて欲しい

司会 昨年新たに「英日出版総合コース ADVANCED」が開講しましたね。

ターニー 「英日出版総合コース」の受講生、修了生が対象ですが、上級コースというよりも、反復練習として利用していただければいいと思います。翻訳は人類が何百年、何千年をかけて編み出してきたもので、一度に全部身につけることは不可能ですから。
 僕は武道が好きで昔やっていたのですが、テクストの翻訳の方法論も、武道の型みたいなものだと思うのです。型があるから、それに沿ってテクニックを磨くこともできるのですが、型だけでは闘えない。プロになるなら、いつかは型を乗り越えないと。繰り返し訓練を行うことで、こういうテクストの場合はこういう訳し方をすればいい、と判断できる目を養って欲しいですね。

河野 イメージ「英日出版総合コース」も「ADVANCEDコース」も、講座はプロの出版翻訳家への出発点です。自分の個性や能力に合わせて、それぞれの道に進んでいただく動機づけにして欲しいと思います。

司会 ところで、DHC通信講座の添削指導は丁寧できめ細かいと評判ですが、どのような印象をお持ちですか。

河野 翻訳の添削は字面だけの直し方をしてはだめで、それぞれの個性に合った赤を入れないといけないところが難しいですね。その点、DHCは受講生の個性を尊重して、丁寧な添削をされていると思います。

友田 毎回2名のスタッフが添削してくださる点もよかったですね。

雨宮 課題の添削のほかに、正確さ、表現力、構成力、商品性の5段階評価もあるので、自分の翻訳力を知るのにとても役立ちました。


出版翻訳家に必要なのはたくさん読んで感動を覚えること

司会 出版翻訳家になるためには、何が必要ですか?

河野 僕は最近水泳教室に通いはじめました。なぜかというと、森鴎外が新聞記者に「先生のような大文豪になるのに一番大切な条件は何でしょう?」と聞かれて、とっさに「そりゃきみ、体力だよ」と答えたという有名な話があるように、翻訳をするなら体力が一番だからです(笑)。

司会 イメージ体力のほかに必要なものは?

河野 難しい質問ですね。翻訳は、誰でも10年やれば、10年やっただけの効果は出ると思います。でも、プロになるには、金メダルを狙う出版翻訳家になるには、それだけではだめだと思います。理想を言えば、義務教育が終るくらいまでに日本語のリズム感が体に染み付いているといいですね。

司会 すでに中学生以上の人はどうしたらいいでしょう?

河野 あとは感動を覚えることでしょうか。これは素晴らしい作品だ、日本の読者に自分の言葉で紹介したい、同じような感動を伝えたい、というところから翻訳は始まるべきです。

雨宮 私の場合もそうでした。原作を読んで感動し、わーっと泣いて、「これを誰かに伝えたい」と思いながら訳しました。

河野 私だから訳せる、と思ったでしょう。

ターニー そのとき、翻訳家は読者でありながら作家にもなっているのです。

河野 ターニー先生が以前、DHC翻訳新人賞の課題文のエッセイに書かれていましたが、先生は、漱石はよく訳されても、三島も川端も谷崎もおやりにならない。

ターニー 三島由紀夫に「なんで俺の作品は訳さないんだ」と言われたことがありますが(笑)、漱石の『草枕』のリズムが耳から離れなくて、三島の作品が英語になりませんでした。

友田 私もそのエッセイをおもしろいな、と思って読ませていただきました。それくらい原文のリズムや感性が訳者に乗り移るのですね。

ターニー
河野
乗り移りますねぇ。

河野 レパートリーが広いのはいいと思いますが、音楽家でもバッハやモーツァルト、ベートーベンとそれぞれ専門家がいるように、なんでも弾かせてください、というのはあまり信頼されません。自分の体質にあった作家と作品に出会うように、日頃から心がけてたくさん読んでいるうちに、自分に向いたものがわかってくると思います。

ターニー 英日翻訳をする人は、どんどん日本の作品を読んだほうがいいですね。文学だけでなく、新聞でも何でもいいです。僕も変わった表現に出会うと「あっ、おもしろい」と今でも喜んでいます。


これからの読者が求めるのは「この人の訳だから読みたい」と思わせる出版翻訳家

司会 国際化時代を迎え、英語の読める日本人も増えています。こうした時代に求められる出版翻訳家とは?

河野 イメージ明治時代の翻訳家は具眼の士と言われて、人々から尊敬を集めていました。最近はすっかり事情が変わりましたが、お金の面でも名前の面でも、海外の翻訳家に比べて日本の翻訳家は恵まれています。それは、日本ではまだまだ翻訳が必要だからでしょう。

ターニー 私は今でも、翻訳は2つの文化の間にまたがった、いかに大事な仕事かを痛感しています。

河野 翻訳家は外交官みたいなものですからね。

ターニー 植民地時代のイギリスとインドの関係を考えても、翻訳がどれだけ悪用されてきたか。いわゆる情報操作ですが、それを考えると非常に恐ろしい反面、すばらしいものだと言うことができます。

河野 ところで、翻訳家は個性を出すべきか出さざるべきか、という議論がありますが、「アルヘリッチが弾くショパン」があるように、翻訳にも個性が出なくちゃおもしろくない。読者はこれから、だんだんそれを要求してくると思います。


翻訳は今までの人生経験すべてが役に立つ仕事

司会 最後に、これから受講される方にメッセージをお願いします。

友田 「英日出版総合コース」はとても骨のある講座です。力がつくことは間違いないですし、同じくデビューのチャンスのある「ADVANCEDコース」も開講したので、情熱を持ってあきらめずに勉強すれば、必ずチャンスは訪れます。あとは根気と体力でしょうか。

雨宮 イメージ子育てをしながら受講してデビューした経験から言えることは、翻訳は「楽しかったこと」「悲しかったこと」、今までの人生経験で感じたことすべてが役に立つ仕事だということです。それと、出版翻訳には実務経験何年以上とか、35歳までという年齢制限はありません。むしろ年齢を重ねたほうが良いのではないのかな、と思いました。もし20歳のときにデビュー作に出会っていたら、訳せなかったと思います。子どもがいるからこそ、子への思いも翻訳に反映することができたのだと思います。

司会 本日は楽しいお話をありがとうございました。


  ※通訳者・翻訳者になる本 2004より記事抜粋

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